ゲートコントロール説は鍼灸治療と関係が深く、鍼灸治療が痛みをやわらげるメカニズムのひとつと言われています。
本記事では、ゲートコントロール説と鍼灸治療について解説します。
1. ゲートコントロール説とは?
ゲートコントロール説(Gate Control Theory)は、1965年にメルザック(Melzack)とウォール(Wall)によって提唱された痛みの伝達メカニズムに関する理論です。
この理論によると、痛みの信号は脊髄後角にある「ゲート」によって調節され、ゲートが開くと痛みが脳に伝わり、閉じると痛みが抑えられます。
具体的には、痛みを伝えるC線維(細く伝達速度が遅い)と、触覚などの感覚を伝えるAβ線維(太く伝達速度が速い)のバランスによってゲートの開閉が決まります。
Aβ線維の刺激が増えるとゲートが閉じ、痛みが軽減される仕組みです。

2. 鍼灸とゲートコントロール説の関係
鍼灸治療が痛みを和らげるメカニズムの一つとして、ゲートコントロール説が考えられます。
鍼刺激によってAβ線維が活性化すると、脊髄のゲートが閉じ、痛みの信号が抑制されるのです。
例えば、肩こりや腰痛の患者に鍼を打つことで、周囲の感覚神経が刺激され、痛みを伝えるC線維の信号がブロックされると考えられます。これにより、痛みの軽減やリラックス効果が得られます。
3. 臨床での応用例
– 慢性痛(腰痛・肩こり)
慢性的な痛みは、脳が痛みを記憶しやすくなるため、ゲートコントロール説を活かした治療が有効です。
鍼灸でAβ線維を活性化させることで、脳への痛みの入力を減らし、慢性痛の軽減が期待できます。
– スポーツ障害(膝の痛み・腱炎など)
スポーツ選手が負傷した際、痛みを感じながらプレーを続けることがあります。
鍼刺激を使うことで痛みのゲートを閉じ、一時的な痛みの緩和を図ることが可能です。
また、炎症が伴う場合は、血流を促進することで回復をサポートします。
4. ゲートコントロール説以外の痛み軽減メカニズム
ゲートコントロール説に加えて、鍼灸が痛みを軽減するメカニズムには以下のようなものもあります。
– 内因性オピオイドの分泌促進
鍼刺激によって脳内のエンドルフィン(モルヒネ様物質)が分泌されることで、鎮痛効果が得られます。
– 血流改善による痛みの軽減
筋肉の緊張をほぐし、局所の血流を改善することで、痛みの原因となる炎症物質の排出を促します。
5. まとめ:鍼灸の科学的根拠と可能性
ゲートコントロール説は、鍼灸が痛みを和らげる理論的な根拠の一つとして注目されています。
科学的に裏付けられた痛みの軽減メカニズムを理解することで、患者への説明や治療の説得力が増します。
鍼灸治療がどのように痛みを抑えるのかを正しく伝え、より多くの人にその効果を実感してもらうことが重要です。